高校時代の部活の生活とリンクする、青っぽいバスケマンガ
バスケットボールが題材のマンガといえば「スラムダンク」が一番有名だろう。
あとは同時期に人気を二分するほどだった「ディアボーイズ」
最近では「黒子のバスケ」や「あひるの空」が話題にあがるんじゃないか。
スラダン世代で小学校からバスケ少年だった私にすればもっとたくさんバスケマンガがあるが、
(ハーレムビート、ハイファイブ、ドラゴンジャム、ダンダンダンク…もっとあったと思う)
その中でもちょっと異色、でも熱くてハマったバスケマンガが「I'll~アイル~」だった。
"カッコいい"のは物語だけじゃなく画力(えぢから)!
舞台は神奈川県。中学までのバスケ生活で周囲と合わずに挫折した主人公・立花茜が、最後の試合で対戦したライバル・柊仁成と国府津高校で再開。
息の合ったプレーができる相棒を得て、それぞれ挫折したチームメイトとともに全国大会を目指す。
(何でいつも舞台は神奈川なんだろうね…。失礼を承知で言えばインターハイなどの全国大会では例年上位に残るチームはほとんど出てない)
と、あらすじを先に書いてみたが、私が初めて読んだとき「イラスト集みたいな絵柄だな」というのが正直な印象だった。
とにかく繊細な線、キャラクターの表情や視線でシーンの行間、雰囲気を伝えようとする構成が目に留まった。
その絵の描き方について、インタビュー記事で言及していた。
全部アナログで描いています。
トーンもかなり使っていますね。
出典:ジャンプSQ
プロの漫画家も浅田先生の原画を絶賛している。
キャラクターの葛藤に青春時代の自分の姿を重ねる
登場人物のほぼ全てに葛藤を持っているのも特徴。
柊仁成
バスケエリートの一家に生まれて自分自身の存在に悩むエース。茜と出会ってバスケに対する情熱を取り戻すが、茜との関係に悩むことになる。
高柳学
茜にバスケを教えた1学年上の幼馴染。試合に負けても悔しさを感じないチームメイトに対して苛立ち、茜にも告げずに引っ越していった。
東本彰彦
中学時代、チームメイトと試合中に接触してケガを負わせたことで高校ではバスケを辞める。
原田徹
東本との接触でケガを負ったプレーヤー。中学時代は県ベスト5に選ばれるほどの実力だったがバスケ部がない高校へ進学。
特に茜と柊、そして茜のバスケの師匠ともいえる高柳の登場、それぞれの関係には目を引かれた。
これらはほんの一部で、ライバル校の選手や国府津高校の先生にも葛藤がある。
そして、これらの葛藤が物語の中の出会いで解消されていく。
そういったご都合主義的な流れは他でもよくあるが、この作品では茜(や他の国府津高校メンバー)との関わり合いによって「人生がもう一度動き出す」という表現が一番しっくりくるかもしれない。
茜と柊仁成、そして高柳学の関係。東本と原田徹の関係。
最善にはならないが各々の考え方や価値観にわずかな変化が起きて良い方向に向かう。
しかもセリフの取り回しがキザっぽい。
お互いの存在の大きさや大切さを画の力とセリフで存分に伝える。
そういった細かい心理描写や雰囲気の表現が作品の随所に出ていて、喜ばしいというより清々しい気持ちにさせられる。
"キラキラした青春"をアイロニカルな態度で皮肉たっぷりに楽しむ。そんな作品だと思う。
青春でロックだからMTGEがよく似合う。イエー。
この作品をリアルタイムで読んでた時よく聴いていたのがミッシェル・ガン・エレファント(TMGE)。
特に「バードメン」が好きでリピートして聴いてた記憶がある。
浅田先生自身もロックが好きでカバー裏のコメント欄でザ・ストリート・スライダーズについて書いてたはず。
作中に出てくる近藤有季や朝倉砂紀がギタリストとして出てくるのを見ていても、この漫画はロック、特に尖りにとがったTMGEやブランキー・ジェット・シティみたいな邦ロックがよく似合う。イエー。
【番外編】浅田弘幸アイル原画展へ行ってきた
「完全版-I'll-アイル」の刊行7巻完結記念に「I'll」連載時の生原稿やカラー原稿を展示した原画展が渋谷で開催されていたので、最終日の9/8に伺ってきた。
アイルの原画がメインで、他にもテガミバチや蓮華、アニメのキャラクター原案を担当した手塚治虫のどろろなど、見どころ満載の原画展だった。
原画を見てるだけでもたっぷり1時間堪能して、さらに浅田先生ご本人も登場!
遠目から見てるだけで内心ドキドキしてた笑
原画の販売もしていて欲しかったがすぐに出せる金額でもなく(泣)入場特典のアクリルスタンドとステッカーで我慢我慢…。
いつかあんなおしゃれな原画を飾りたい。